POCKET BASE - Category:Review

戦後の混乱期を爽やかな風のように駆け抜けた少女がいた。岩倉可奈。18歳。アメリカ軍将校用のゴルフ場で働き、家族を支える日々。スコットランドで幼い頃から身につけたゴルフで、米軍将校たちをきりきり舞いさせる生きのいいヤマトナデシコだ。時代の大波のなかで、凛として自分を貫き、今このときを精いっぱいに生きる――そんな姿が勇気をくれる、感動作!

喜多嶋隆『She Is Wind 彼女は風のように』(光文社、2011年)、カバー

She Is Wind 彼女は風のように

喜多嶋隆の新刊、『She Is Wind 彼女は風のように』が光文社文庫より。

物語は第二次世界大戦の前から、大戦中、そして戦後と、喜多嶋作品としては始めての時代設定。それでも、ヒロインの、背筋を伸ばし、まっすぐに前を向いて歩き続ける様は、いつもの喜多嶋作品だ。

現在、東日本大震災により、日本中が重苦しい雰囲気になっている。政府は迷走と暴走を繰り返し、マスコミは不安と悲しみを煽るような報道を続けている。被災地では、いまだ被害が拡大しており、いつ復興するのか予想もつかない。新燃岳噴火の傷さえ、まだ癒えていないというのに。

しかし、我々のおじいちゃんやおばあちゃんは、戦後の日本を復活させた。幾度の大震災も乗り越え復興してきた。今度は、今を生きる世代の番だ。

今作のヒロインは、敗戦で日本中が沈んでいた戦後でも、凛として自分を貫き、精いっぱいに生きている。そして、父親の残したつねにフェアーであれ。何に対しても、そして、誰に対しても……。という言葉を胸に、フェアーな生き方を貫いている。

世界中の注目が日本に集まっている、こんなときだからこそ、いま自分がすべき行動をよく考え、今作のヒロインのように、何に対しても、そして、誰に対しても、恥ずかしくない、フェアーな生き方をしなければと思う。

Be Fair. 〜フェアーであれ

小早川咲、34歳。夫を事故で亡くし、息子の航と15年ぶりに戻った地元・葉山で、咲は周雲龍という中国人青年と出会う。事故で傷付いた航の心を開くため、釣り船の船頭である周と毎日一緒に釣りをすることに……。穏やかに笑い合う日々を過ごし、自然と惹かれ合っていく2人。やがて秘密の合図を使ったメッセージを送りはじめるが……。喪失と再生との間で揺れ動く想い。不器用な大人たちの切ない恋を描く上質の恋愛長篇。

喜多嶋隆『恋のぼり 二人で見ていた、あの空に』(角川書店、2011年)、カバー

恋のぼり 二人で見ていた、あの空に

喜多嶋隆の新刊、『恋のぼり 二人で見ていた、あの空に』が角川文庫より。

切ない悲恋物語。あとがきに「虹のような恋を描きたかった。」という言葉があった。いつの間にかああらわれ、そして、いつの間にか必ず消えていく、そんな虹のような恋の物語。

この歳になると、哀しい内容のモノよりも、楽しいモノを欲してしまうのだが、今作には、虹のように消えていく喪失感だけでなく、虹が出ている空の陽射しような優しさも描かれているので、ひと安心。

今年最初となる喜多嶋組長の一冊だったが、今月は光文社からも、一冊文庫本が出るらしい。喜多嶋組の組員としてはうれしい限り。そういえば、昨年は喜多嶋組のイベントに行けなかったけれど、今年はいけるといいなぁ。

追記(2011-2-11):
光文社からの新刊の発売は、来月に変更されたようだ。

マーサの幸せレシピ

ケーブルテレビで放送されていたドイツ映画『マーサの幸せレシピ』。この映画をハリウッドでリメイクした『幸せレシピ』は映画館で観たのだが、こちらのオリジナル版は初めて。リメイクだとは知っていたけれど、オリジナルはドイツ映画だったんだね。

リメイク版の方は、主演のキャサリン・ゼタ=ジョーンズと、子役のアビゲイル・ブレスリンの演技はとてもよかったのだが、全体が、なんとなく大味な感じがした。

しかし、オリジナル版の方は、役者さんは知らない人ばかりだったのだが、全体がしっかりと構成された感じで、あぁ、これはこういう話だったんだと納得させられ、観終えたあとには、とても満足感がある映画だった。

二つの映画の違いはというと、こちらのオリジナル版の方は、キャラクターの背景や行動をしっかりと理由付けて丁寧に描いた、家族(親子?)の関係を描いた作品。対するリメイク版の方は、その設定を利用して恋愛モノに仕立て、役者陣の演技や魅力を押し出して、楽しげな雰囲気に仕上げた作品。といった感じだろうか。

まあ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズは結構好きなので、リメイク版の方も楽しめたのだが、両方を比べてみると、やはりオリジナル版の方が好みかな。

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