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A7 しおさい楽器店ストーリー 喜多嶋隆

ここは葉山の海が見渡せる楽器店。店主の牧野哲也は十代でデビューして注目を浴びたギタリストだが、活動を中断し充電中。目が不自由な従妹の涼夏を引き取り、気ままな二人暮らしを送っている。店に持ち込まれる中古ギターが運んでくる音楽を愛する人々の熱い想い。それがいつしか哲也の心の奥に火をつけてゆく――。湘南の海風のように爽やかな青春音楽小説。

喜多嶋隆『A7 しおさい楽器店ストーリー』(光文社、2019年)、カバー

喜多嶋隆の新刊、『A7 しおさい楽器店ストーリー』が光文社文庫より。久しぶりに音楽を題材にした喜多嶋作品。

活動を中断しているギタリストと、親元を離れて暮らす目が不自由な少女。会社での仕事を選び夢を諦めようとするサラリーマンと、ウインドサーファーとしての将来を期待されながらも不安を抱えている娘。人生で足踏みをしているような状態の登場人物たちが、どのように一歩を踏み出すのか。それぞれの人生が、音楽と絡み合いながら織りなす人間模様が描かれた、爽やかな青春小説だった。

あとがきに「音楽がないと生きていけない人たちの物語」とあったけれど、そんな登場人物たちが、これから音楽とともにどう生きていくのか? 続きが気になり、シリーズ化を期待したくなる作品だ。

ところで、自分が楽器を全くできないということもあるけれど、演奏できる人は本当に尊敬する。以前にウクレレ演奏の体験をした時、簡単な曲を一曲弾くだけでいっぱいいっぱいだったし。本当にスゴイ。本作のタイトルにもなっている「A7」のコードが弾けた時の嬉しさも、ギターをやっていたらもっと分かったのかもね。