コロナ禍で緊急事態宣言が出されていた頃は、仕事と買い物以外、ほとんど外出していなかったので、書棚で眠っていた本を随分と読んだ。そんな家にこもる日々が続いていたなか、世界を旅している気分にさせてくれた本が、沢木耕太郎の『深夜特急』だ。
インドのデリーからイギリスのロンドンまで、バスだけを使って一人旅をするという主人公の物語。作者の旅行体験を元に描かれている、1980年代から90年代頃の作品。旅行記と言っても普通の旅とは違う、少し特殊な内容で、当時はバックパッカーのバイブルとも呼ばれていたそうだ。
作者が体験した1970年代頃の各国の様子、特に途上国の人々の暮らしぶりを知ることができる。さすがに現在は当時と違うだろうとは思うが、平和な日本でずっと暮らしてきた身には、その辺りのことをうかがい知ることは難しい。
一人旅は好きで、昔は毎年行っていたけれど、全部国内だった。もちろん電車もバスも使い、ちゃんとしたホテルに泊まる、『深夜特急』とはまったく違う旅だったが。それでも、多人数ではできない、一人ならではの旅を満喫していた。また行きたいなぁ。
ところで、うちにある『深夜特急』は、単行本3冊分を6冊に分冊化して刊行された新潮文庫版だが、最近、これの文字を拡大して読みやすくした新版が発売されている。書店で確認してみたけれど、この歳になると確かに新版の方が読みやすい気がする。うーん、またいつか読むだろうし、買い直すかな。
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