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雨の日には車をみがいて 五木寛之

梅雨入りしてから、雨は少ないながらも、ムシムシ、ジメジメした毎日に気分や身体の調子を崩しがち。そんな中でも、梅雨入り前に洗車機で撥水コートしておいた車のボディの上を、雨の滴がコロコロと滑り落ちる様が気持ち良く、沈んだ気分を少しは和らげてくれている。しかし、昔は手洗いで洗車し、ワックスも丁寧にかけていたけれど、最近はずっと洗車機だな。

ところで、毎年一回は本棚の奥から引っ張り出して読んでいる文庫本がある。五木寛之の『雨の日には車をみがいて』。文庫本の初版が1990年、単行本は1988年だから30年も前の小説。雨の日が続くと、ついこの本が読みたくなる。

物語は、1966年の夏から始まる。シムカ1000、アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・スパイダー、ボルボ122S・アマゾン、BMW2000CS、シトローエン2CV、ジャグヮーXJ6、メルツェデス・ベンツ300SEL6.3、ポルシェ911S、サーブ96Sと、1987年の夏までの21年間、9編からなる主人公の愛車遍歴。

どれも個性的な欧州車だが、物語には、それに負けず劣らず個性的な女性たちも登場する。そして、それぞれの女性が車を引き立てる存在でもある。この小説は、車と女性たちとの出会いと別れを描いた、単なる恋愛小説では無い。車好きとしても有名な五木寛之らしい、車の魅力を存分に伝えるための小説だ。

雨の日が続く時期になると読みたくなるのは、ただ単にこの本のタイトルからなのだろう。これは、第1話の「たそがれ色のシムカ」に出てくる女性の台詞から来ている。

よくいるわよね。ほら、自慢の車を洗車したあとに雨に降られると舌打ちしたりするようないやな男が。ああいうのは絶対に女に嫌われるタイプよ。車は雨の日にこそみがくんだわ。ぴかぴかにみがいたボディに雨の滴が玉になって走るのって、すごくセクシーだと思わない? 雨の日に車をみがくのをいやがる男なんて最低ね

五木寛之『雨の日には車をみがいて』(角川書店、1990年)、p.36

いかにもバブル真っ只中の、なんとも強気な女性の台詞だが、いい車といい女に誰もが憧れていた時代。まさにそんな時代を映し出しているかのような台詞だ。

残念ながら、あこがれの外車にも、誰もが振り返るような美女にも出会えなかったし、今ではそんなモノがステータスだなんてまったくのナンセンスだけれど、そんな時代の幻想を、たまに懐かしんでみるくらいはいいよね。

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