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きみがハイヒールをぬいだ日 喜多嶋隆

数々の賞を射止めた若き女性広告ディレクター・中川凛。ある事情から広告業界に嫌気がさし、東京を脱出。葉山でヨット暮らしを送っていた。クルージングと読書、そして海に抱かれて眠る日々……。そこに新たな仕事の依頼が飛び込む。気乗りのしない彼女だったが、ある少女との出会いが、心の奥に眠る想いに火をつけた――。海風のように爽やかな、大人のための青春小説。

喜多嶋隆『きみがハイヒールをぬいだ日』(光文社、2011年)、カバー

喜多嶋隆の新刊、『きみがハイヒールをぬいだ日』が光文社文庫より。

今作の主人公、中川凛は、クリエイティブディレクター件コピーライター。以前にも、コピーライターが主人公の探偵モノシリーズがあったが、それよりも作品づくり寄りな物語になっている。

同じ業界の片隅にいるものとして、今ではまずあり得ないだろうなと思ってしまうストーリーだが、ものすごくあこがれるストーリーでもある。ほんと、喜多嶋作品によく出てくるような、理解あるクライアントに巡り合いたいものだ。もちろん、理解があるだけではなく、要求されるレベルも高いので、こちらがわも、それに見合ったアイデアを出さなくてはならないのだろうが。

コピーライターという仕事を、ちょっと休んでいる主人公。その生き方は、今までの喜多嶋作品の主人公たちと同じように、自分の人生を、自分の思い通りに生きている。しかし、その歩みは、少しのんびりと歩んでいるような感じだ。

気負わず、のんびりと、自分らしく。そんな中川凛の、今後の物語もぜひ読みたいと思う。シリーズ化されればいいな。

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