
コスミック出版から刊行されている、辻堂魁の『鬼しぶ』を読んだ。同作者の「風の市兵衛」シリーズに登場する濃厚脇役・渋井鬼三次が主役になったスピンオフ作品だ。なぜか刊行元は違っているけれど。
時系列的には、鬼三次が市兵衛と出会う前の話。まだ北町奉行所の平同心で、岡っ引の助弥が鬼三次の手先となるきっかけも描かれている。「鬼しぶ」前夜という感じ。序盤は最近の辻堂魁作品っぽく、なんだか説明が長かったけれど、中盤からの展開は面白く、最後まで一気に読んでしまった。
事件を解決するだけでなく、人情味あふれる鬼三次らしい様子も散りばめられ、お馴染みの登場人物だけでなく、新しく魅力的なキャラクターも登場。市兵衛シリーズ同様に、作品に引き込まれて江戸の街を体感しているような感じに。
最後には、お奉行の永田備後守の指図により定町廻りへ抜擢され、程なく「鬼しぶ」というあだ名が付けられて、市兵衛シリーズでお馴染みの「鬼しぶ」となっている。面白かったし、「風の市兵衛」へと繋がるまでのいろいろな話をシリーズ化してくれるといいな。
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