吉永南央の『その日まで 紅雲町珈琲屋こよみ』の文春文庫版を読んだ。前作『萩を揺らす雨』に続く、紅雲町珈琲屋こよみシリーズの第2弾。
舞台は、丘陵の上から大きな観音様が見下ろす街、紅雲町。主人公は、そこでコーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む気丈なおばあちゃん「お草さん」こと杉浦草。そのお草さんが、毎日の生活の中で沸き起こる小さな事件の謎を解いていく。
おばあちゃんが謎を解いていくといえば、アガサ・クリスティのミス・マープルが有名だが、そこまでの大きな事件ではなく、本当に狭い範囲での小さな事件に、お草さんが首を突っ込んだり巻き込まれたという感じだ。それでも、前作に比べ今作は、ひとつひとつの事件がつながり、紅雲町全体の少し大きな因縁話となっている。
もう70代半ばのお草さん。長い人生の中で積み重なった、いろいろな悩みや問題も抱えている。それでも、さまざまなことを乗り越えて、毎日を笑顔で過ごしている。まわりの友人たちに見守られながら、また、お草さんも、まわりの友人たちを温かく見守り続けながら。そんなお草さんに惹かれて友人たちが集まる、お草さんの店「小蔵屋」。こんなお店があったら行ってみたいな。
ところで、前作の最後に宮崎の息子のところへ引っ越したはずの由紀乃さんが、今作では変わらず登場していたが、それ以前の話ということだろうか。まあその方が、お草さんと由紀乃さんの、ほんわかとした会話があっていいんだけどね。
ちなみに、単行本ではシリーズの第3弾『名もなき花の』が出ている。こちらの文庫化で、またお草さんと友人たちに会えるのが楽しみだ。
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