湘南・葉山のかたすみにひっそりとたたずむ一軒のホテル。若き女性オーナー・美咲が経営するこの海辺のホテルには、様々なわけあり客たちがやってくる。偽名を名乗るカメラマンや、トーナメントシーズン真っ最中に大会を欠場してやって来たゴルフのトッププロ、三十代の日本人女性と青年アメリカ兵の年の差カップル……。彼らの心に秘められた、謎と事件とは――? 等身大な大人の恋愛と人生模様を描き、心に響く連作短編小説。
喜多嶋隆『かもめ達のホテル』(角川書店、2013年)、カバー
喜多嶋隆の新刊、『かもめ達のホテル』が角川文庫より。今作の舞台は、湘南・葉山の海辺にある、静かな隠れ家のような「葉山一色ホテル」。主人公は、亡き父からそのホテルを受け継いだ、女性オーナーの美咲。そして、ホテルを訪れる客人たち。
隠れ家のようなホテルゆえ、訳ありの客人も多い。強風を避け、物陰で身体を丸め翼を休めるカモメのように、普段の生活から離れて、そのホテルで心と身体を休める。そんな客人たちが、短い休息のあとに、どのような決断をして飛び立って行くのか。それぞれの決断が興味深い。
ホテルといえば、それほど多くはないが、いろいろなところへ旅行に行き、いろいろなホテルに泊まってきた。そんな中でも、個人的に好みなのは、やはり心地よく落ち着けるホテル。静かな立地という訳ではなく、賑わしい場所でも、設備やサービスなどに心配りがされていると、やはり落ち着いて過ごせる。横浜のホテルニューグランド本館とかよかったなぁ。
最近は、もろもろの条件のなかから予算を優先させるようになってしまい、なかなかいいホテルとは出会えていない。別に、安くてもいいホテルはあると思うんだけどね。今度旅行に行く時は、心と身体が休まる、心地よいホテルに出会えるといいな。
喜多嶋 隆のホームページ- web KADOKAWA – 角川書店・角川グループ
読後にさわやかな風を感じる喜多嶋作品。もう30年読み続けてきてますが、まったく飽きずに次の作品を期待してしまうのは、シンプルな表現と等身大の登場人物、そしてバックに感じる海の匂いのなせるワザでしょうか。
登場人物たちがいつも魅力的で、読んでいて潮風を感じ取れるようなストーリー。喜多嶋作品は、何度読み返しても飽きないですよね。