その町は、どこにでもあるような、普通の田舎町だった。ただひとつ、その町の少年すべてが、「吉野刈り」というマッシュルームカットにしていることを除いては……。
『バーバー吉野』は、2003年に発表された映画で、荻上直子監督の、長編初監督作品。主演には、もたいまさこ。二人のコンビは、この『バーバー吉野』から、『恋は五・七・五!』、『かもめ食堂』、『めがね』へと続いている。
なかなか観る機会がなかったのだが、先日、やっとDVDで観ることができた。
床屋のおばちゃん役を演じるもたいまさこは、あいかわらずの好演。そして、町の少年たちの演技も、素朴で、この作品のテイストにとてもあっている。
その少年たちが、「吉野刈り」という、100年以上も続く町の伝統に反旗を翻し、プチ家出をするところからの流れは、あの名作『スタンド・バイ・ミー』を彷彿させるというのは、少し大袈裟だろうか。
純真だった少年時代。ささやかな反抗心。初恋。すこしづつ昇ってゆく大人の階段。そんな時代を思い出し、ちょっぴり、こっぱずかしい気持ちにさせてくれる作品。
ところで、先日、荻上直子監督の最新作『トイレット』が発表された。今夏の公開を予定しているらしく、すべてカナダのトロントで撮影されたとか。そして、唯一の日本人キャストとして、今回も、もたいまさこが出演するそうだ。これは期待できるかな?
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