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ミラクルバナナ

西半球の最貧国といわれるハイチ共和国。そんなハイチ共和国に、大使館の派遣員として赴任した三島幸子。ハイチのことをほとんど知らなかった彼女にとって、その現状すべてがカルチャーショックだった。

ある日、偶然バナナの木から紙ができることを知る。こんな貧しい国でさえ捨てられているバナナの木から、紙を作ることができれば何かが変わるかも! そう直感した彼女は、バナナの紙をつくるプロジェクトを立ち上げる。

名古屋市立大学の森島教授がリーダーを努めている、実際のプロジェクトをモチーフにした映画『ミラクルバナナ』。劇場公開時は、結局地元で公開されずに観られなかった映画。やっとDVD化となり観ることができた。

内容は全編を通して明るい。貧困という問題を扱っているが、主人公の幸子やハイチの人々の明るさが伝わってくる。緒形拳扮する和紙職人が、ハイチの街中を見て「まるで戦後の闇市だ」と言っていた。それはきっと、風景ではなくハイチの人々の「生きるための明るい強さ」を見ての言葉だろう。

「日本の交通事故の死者は年に1万人くらい、それに自殺する人は3万人以上いるかな」「3万人? 自殺なんてこの国にはほとんどないよ。日本は何でもある豊かな国なのになぜ?」。幸子と同僚のフィリップが交わす会話だ。

日本人が忘れてしまった大切な何かが残っているハイチ。そんなハイチで、バナナ・ペーパー・プロジェクトによって、日本では衰退しつつある手漉き和紙という文化が受け継がれようとしている。日本人が失ってしまったものとは? そして取り戻さなくてはいけないものとは? そんな事を考えさせてくれる、素晴らしい映画だった。

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