
庭に咲いている春の花はもう少なくなり、気の早い額紫陽花や菖蒲といった梅雨の花が咲き始めているなか、まだ芍薬の花が2輪残っていた。
芍薬といえば「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉が思い浮かぶ。女性の立ち姿や、座ったり歩いたりする際の美しい所作を、初夏に咲く花に例えた言葉だ。
日本ならではの優美な言葉だと思うのだが、昨今では、女性へのこういう表現さえ批判されかねないという、なかなか世知辛い世の中なので、もう迂闊には言えなくなった言葉なのかも。
そんな魅力的な女性を表す言葉だが、実は生薬の用い方を表した言葉でもあるとか。立っている時、座っている時、歩いている時の女性の症状と有効な生薬を例えており、今でも漢方では、芍薬や牡丹、百合が、それぞれの症状の改善に使われているらしい。
どちらの意味でも、美しく大切な日本の言葉なので、言葉狩りにあって消えていかないことを願うばかりだ。
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