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「ハワイの本当の良さをアピールするCFを作ってほしい」。流葉爽太郎のもとに州知事からの依頼が飛び込んだ。観光PRではなく、現地の人々の誇りになるようなCF——爽太郎の出した答えは意外なものだった。現地に飛んだ流葉は一人のロコ・ガールをスカウトする。希望、挫折、そして再起へ……。さまざまな人々の想いをのせて、いまキャンペーンは走り始める!

喜多嶋隆『君を探してノース・ショア』(光文社、2007年)、カバー

君を探してノース・ショア

喜多嶋隆の新刊、CFギャング・シリーズ『君を探してノース・ショア』が光文社文庫より。初期に8作。そして、復活してからは第9作目となるロングランシリーズ。帯に書かれている「シリーズ最高傑作」の文字どおり、このシリーズらしさの出た、とても良い作品だと思う。

復活してからも順調に刊行されているCFギャング・シリーズだが、今回の作品で初期に刊行されていた数を抜いた。まだまだ続きそうだし、是非続いて欲しい作品だ。

同じ光文社文庫から刊行されていたモノでライカ・シリーズがある。2作しか刊行されていないので、シリーズと呼べるかどうかは分からないが、こちらの復活も是非期待したい。2作しか刊行されていないということは、あまり人気がなかったのだろうか? 結構好きな作品なので、頻繁なシリーズ化ではなくても、また続きが読みたいものだ。

On The Beach

角川書店より喜多嶋隆の新刊『On The Beach』。角川書店からはここ数年、単行本ばかりだったので、久しぶりとなる新作文庫本。そして、これまた久しぶりとなる短編集だ。

湘南、ハワイ、ロス……。『On The Beach』というタイトルどおりの、海辺を舞台にした五つの短編は、どれもがサラリとしたタッチで書かれ、フワリと夏の潮風を感じることが出来る。そして、のんびりとリラックスした時間と、ほんの少しの勇気もわけてもらえる作品だ。

最近の喜多嶋作品には「爽快感」が足りないと言う人もいる。海の上を船で走っている時に受ける風。海岸線のサイクリングロードを自転車で走っている時に受ける風。確かに昔からの喜多嶋作品では、そういう爽快な風を感じる事が出来た。

しかし、最近の作品では、海辺のテラスで本を読んでいる時に感じるフワリとした風。雨上がりに、ビーチを散歩している時に頬に感じる澄んだ風。そういう優しい風を感じる事も多い。

爽快な風と優しい風。確かにまったく違う風だが、どちらの風でも、私には喜多嶋作品らしいと感じる事が出来る。何故なら、そこにはいつも共通の「潮風」というフレーバーが添えられているのだから。

雨の夜。流葉爽太郎は、怪しげな男たちに追われる少女を救う。流葉亭で働き始めた彼女には、つらく哀しい過去があった。ある日、ギターを手に歌い始めた少女。その孤独な魂の叫びが、流葉の胸に深く沁みていった。やがて通い始める心と心……。彼女を世界一のジーンズ・メーカーのCFに起用する流葉。しかし、背後には執拗な追っ手の姿が迫っていた——

喜多嶋隆『あのバラードが歌えない』(光文社、2007年)、カバー

あのバラードが歌えない

喜多嶋隆の新刊、CFギャング・シリーズ『あのバラードが歌えない』が光文社文庫より。喜多嶋作品の中でも、一番好きなシリーズ。喜多嶋作品にはまったきっかけになったのもこのシリーズ。

相変わらず恰好良く、相変わらず渋く、相変わらず自由奔放で、相変わらず完璧な流葉爽太郎。しかし今回の作品では爽太郎の弱さというかもろさが少し見えた感じ。しかし、いつもより少し大人っぽく感じたのは気のせいだろうか。

ところで、先月1週間ほど入院というものを初体験していたのだが、最初の2日間はもうとにかく暇で暇で。おまけにあまり動けないは、気分は滅入るはで、二度と入院なんて勘弁という感じだった。しかし、そんな滅入った気分を癒す清涼剤として大活躍してくれたのが、この爽快感あふれる喜多嶋作品たち。家の本棚からごっそりと喜多嶋隆の文庫本を持ってきてもらい、その後は退院までずっと喜多嶋作品漬け。たった1週間だが、退屈で気分の滅入る入院生活も喜多嶋作品のおかげで随分と楽に過ごせた。喜多嶋隆氏に感謝。

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