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数々の賞を射止めた若き女性広告ディレクター・中川凛。ある事情から広告業界に嫌気がさし、東京を脱出。葉山でヨット暮らしを送っていた。クルージングと読書、そして海に抱かれて眠る日々……。そこに新たな仕事の依頼が飛び込む。気乗りのしない彼女だったが、ある少女との出会いが、心の奥に眠る想いに火をつけた――。海風のように爽やかな、大人のための青春小説。

喜多嶋隆『きみがハイヒールをぬいだ日』(光文社、2011年)、カバー

きみがハイヒールをぬいだ日

喜多嶋隆の新刊、『きみがハイヒールをぬいだ日』が光文社文庫より。

今作の主人公、中川凛は、クリエイティブディレクター件コピーライター。以前にも、コピーライターが主人公の探偵モノシリーズがあったが、それよりも作品づくり寄りな物語になっている。

同じ業界の片隅にいるものとして、今ではまずあり得ないだろうなと思ってしまうストーリーだが、ものすごくあこがれるストーリーでもある。ほんと、喜多嶋作品によく出てくるような、理解あるクライアントに巡り合いたいものだ。もちろん、理解があるだけではなく、要求されるレベルも高いので、こちらがわも、それに見合ったアイデアを出さなくてはならないのだろうが。

コピーライターという仕事を、ちょっと休んでいる主人公。その生き方は、今までの喜多嶋作品の主人公たちと同じように、自分の人生を、自分の思い通りに生きている。しかし、その歩みは、少しのんびりと歩んでいるような感じだ。

気負わず、のんびりと、自分らしく。そんな中川凛の、今後の物語もぜひ読みたいと思う。シリーズ化されればいいな。

プロのミュージシャンを目指す高校3年の僕、水町涼は七里ケ浜のスタジオで悠子と出会った。ピアニストとして将来を期待される音大生のお嬢。その大人っぽさと時に見せる少女のような無邪気さに僕は恋に落ちた――。孤独な過去を持つ僕と将来に迷いを抱える彼女は、音楽を通じて心を通わせてゆく。だが生きてきた境遇が違いすぎる二人の前には、やがて壁が立ちはだかり……。人生のほろ苦さと青春のきらめきを描く傑作恋愛長編。

喜多嶋隆『ラブソングが歌えない』(角川書店、2011年)、カバー

ラブソングが歌えない

喜多嶋隆の新刊、『ラブソングが歌えない』が角川文庫より。

新刊といっても発売は先月だけどね。ずっと忙しくて、馬車馬のように働いていたもので……。

今作は、バンドをやっている高校生の少年と、ピアニストの女子大生との、爽やかな恋愛小説だ。

喜多嶋作品で、音楽がモチーフの小説といえば、「Sing」シリーズや、古いのだと「ポニー・テール」シリーズや「カモメ物語」シリーズなんかがあるけれど、今作は、それらよりもラブストーリ色が強いかな。こういう音楽モノもいいね。

ところで、今作は、今までとちょっと趣向が違うところがある。実は、ファンクラブの会員のために、毎月テープかCDで配布されている、書き下ろしのショートストーリー「ココナッツ・クラブ」で以前発表された2作品がベースになっているのだ。

当初はココナッツ・クラブでの作品の続きなのかな? と思っていたが、プロットを変え、別の作品として仕上がっている。

ファンクラブの会員にとっては、読み終わった後に、ココナッツ・クラブを聞き返すことで、二度美味しいお得な作品だ。

戦後の混乱期を爽やかな風のように駆け抜けた少女がいた。岩倉可奈。18歳。アメリカ軍将校用のゴルフ場で働き、家族を支える日々。スコットランドで幼い頃から身につけたゴルフで、米軍将校たちをきりきり舞いさせる生きのいいヤマトナデシコだ。時代の大波のなかで、凛として自分を貫き、今このときを精いっぱいに生きる――そんな姿が勇気をくれる、感動作!

喜多嶋隆『She Is Wind 彼女は風のように』(光文社、2011年)、カバー

She Is Wind 彼女は風のように

喜多嶋隆の新刊、『She Is Wind 彼女は風のように』が光文社文庫より。

物語は第二次世界大戦の前から、大戦中、そして戦後と、喜多嶋作品としては始めての時代設定。それでも、ヒロインの、背筋を伸ばし、まっすぐに前を向いて歩き続ける様は、いつもの喜多嶋作品だ。

現在、東日本大震災により、日本中が重苦しい雰囲気になっている。政府は迷走と暴走を繰り返し、マスコミは不安と悲しみを煽るような報道を続けている。被災地では、いまだ被害が拡大しており、いつ復興するのか予想もつかない。新燃岳噴火の傷さえ、まだ癒えていないというのに。

しかし、我々のおじいちゃんやおばあちゃんは、戦後の日本を復活させた。幾度の大震災も乗り越え復興してきた。今度は、今を生きる世代の番だ。

今作のヒロインは、敗戦で日本中が沈んでいた戦後でも、凛として自分を貫き、精いっぱいに生きている。そして、父親の残したつねにフェアーであれ。何に対しても、そして、誰に対しても……。という言葉を胸に、フェアーな生き方を貫いている。

世界中の注目が日本に集まっている、こんなときだからこそ、いま自分がすべき行動をよく考え、今作のヒロインのように、何に対しても、そして、誰に対しても、恥ずかしくない、フェアーな生き方をしなければと思う。

Be Fair. 〜フェアーであれ

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