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幽霊塔 江戸川乱歩

時は、大正のはじめ。26歳のまっすぐで血気盛んな青年北川光雄は、絶世の美女、野末秋子に出会った。場所は、九州・長崎県の片田舎にある幽霊塔と呼ばれる時計塔。惨殺された老婆が幽霊となって徘徊すると噂されるところだった。秋子は、そんな場所で何をしようとしていたのか。秘密を抱えた秋子に、光雄は惹かれていき……。夥しい数のクモを飼う男、「救い主」と呼ばれる不思議な医学博士、猿をつれた太った女――。怪しい人物たちが二人の周囲で暗躍する。そして時計塔の秘密とは? 江戸川乱歩の名作が、宮崎駿のカラー口絵とともに蘇る!

江戸川乱歩『幽霊塔』(岩波書店、2015年)、帯

岩波書店から昨年の6月に刊行された、江戸川乱歩の『幽霊塔』を読んだ。店頭で宮崎駿の表紙絵が目に留まり、手に取って本を開いてみると、冒頭には宮崎駿によるカラー口絵が。口絵もボリュームがあって面白そうだったし、江戸川乱歩というも懐かしいので、久しぶりに読んでみようかと購入した。

この『幽霊塔』は、まだ子供のころ、ずいぶん昔に読んだきりで、内容はほとんど忘れていたため、新鮮な気持ちで読むことが出来た。いやぁ、久しぶりだけどやっぱり乱歩はいいね。かなり昔の作品だが、それを理解して読めば今でも充分に面白い。

思えば、小学生のころは学校の図書室にあった乱歩作品を読みあさっていた。特に、明智小五郎や少年探偵団と怪人二十面相の対決は、胸を躍らせて読んでいた。図書室にないモノは、市の図書館まで行って読んでいた。よくよく考えると、今の小説好きになった原点は江戸川乱歩の作品だったのかもしれない。

そんな江戸川乱歩の作品だが、昨年で乱歩の没後50年が経ち、今年の1月1日で著作権保護期間が終了。パブリックドメイン、つまり社会の共有財産となり、無料で自由に読むことができるようになった。ということで、青空文庫ではさっそく江戸川乱歩の処女作品『二銭銅貨』が公開されている。作業中の作品リストの中にも、乱歩作品が大量に入っているので、今後もどんどん公開されていくのだろう。

ただ、ちょっと心配なのが「環太平洋戦略的経済連携協定」。いわゆるTPPってヤツ。これににより、著作者の没後50年となっている日本の著作権保護期間が、諸外国と同じ70年に延びる可能性が高い。そうなると、青空文庫での乱歩作品の公開は中止され、すでに公開されている作家の作品でも、公開中止になるモノが大量に出てくるだろう。できれば、そのあたりは臨機応変に、なんとかならないものだろうか。

あぁ、あと本書の目玉でもある宮崎駿のカラー口絵は、パッと見たところネタバレっぽかったので、本編を読んだ後に見た。これは、三鷹の森ジブリ美術館で、昨年から今年の5月まで開催されている企画展示「幽霊塔へようこそ展 ―通俗文化の王道―」で、解説用のパネルとして展示されているモノが収録されているそうだ。これがまた面白く、宮崎版『幽霊塔』のアニメ映画を、叶わないとはわかっていながらも期待せずにはいられないほどの内容。引退前にこれで長編映画を1本作って欲しかったなぁ。

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